外国人労働者の労働時間について(後編)
今回は技能実習生が失踪してしまった場合に必要な対応をご紹介します。
- 監理団体に報告
まずは技能実習生受け入れに使用している監理団体へ報告が必要です。
そこから監理団体・送り出し機関・受け入れ企業の3者間で捜索します。 - 警察に相談
失踪した技能実習生が事件に巻き込まれている可能性も十分にあるので、警察へ捜索願の提出を行う必要があります。 - 外国人技能実習機構に「技能実習実施困難時届出書」を提出
監理団体から外国人技能実習機構へ「技能実習実施困難時届出書」を提出します。
「技能実習実施困難時届出書」にて失踪についての詳細を技能実習機構へ報告します。
提出後は、「技能実習困難時届出書」に記載された理由と監理団体の監査記録を比較し、記載された理由が正当か否かを外国人技能実習機構が判断します。
その理由が正当な理由だと判断された後に、失踪した技能実習生が警察に捕まり新たな理由が明らかになった場合は、この新たな理由が正当か否か再度判断されます。 - 退職手続きを行う
社会保険・雇用保険の資格喪失手続きをする必要があります。 - 給与の支払い
受け入れ企業は技能実習生が失踪前に就業した分の給与は給料日に支払うことが求められます。支払わなければ「給与の未払い」扱いになるため注意が必要です。
失踪後の就業していない期間の給与は当然支払う義務はありません。
「優良な実習実施者」の基準
技能実習生の失踪が多い企業は、技能実習における「優良な実習実施者」の基準を満たせなくなる可能性があります。優良な実習実施者の対象から外れると、技能実習3号の受け入れができなくなり、受け入れ人数枠も規定の人数となってしまいます。
「優良な実習実施者」の基準はポイント制となっており、150点満点中6割以上の点数を取れば優良な実習実施者となります。
技能実習生の失踪に関する基準
技能実習生の失踪に関する基準は以下の通りです。
- 直近過去3年以内における失踪がゼロ又は失踪の割合が低いこと
失踪者が0人→5点
失踪者が10%未満又は1人以下→0点
失踪者が20%未満又は2人以下→-5点
失踪者が20%以上又は3人以上→-10点 - 直近過去3年以内に責めによるべき失踪があること
該当する場合→-50点
失踪者の基準に、割合のほか人数があるのは受け入れ数が少ない企業に配慮しているからです。
例えば、3年間で3人の実習生を受け入れている場合、1人が失踪すると「失踪の割合が20%以上」となり10点減点されてしまいます。
この場合、「失踪者が1人以下」の人数での基準を適用すれば、減点はありません。
ただし、受け入れ企業の「責めによるべき失踪」があった場合には人数に関わらず50点の減点となります。
現在、「優良」となるには150点満点中6割以上の90点以上を取る必要があります。
実習実施者の責任による失踪が起きた場合は、50点引かれるため「優良な実習実施者」になるのは難しくなります。
「責めによるべき失踪」は個別判断となりますが、給与を適切に払わない劣悪な環境で働かせたなどの理由で技能実習生が失踪した場合が該当します。
出入国在留管理庁が新たな失踪防止策を発表
令和元年11月12日に出入国在留管理庁が新たな失踪防止策を発表しました。
注目すべき内容は以下の4つです。
- 一定期間の新規受け入れ停止措置
以前は失踪原因が実習先にある場合のみ、その機関の新規受け入れを停止するという対策を年度内に開始する予定としていましたが、今回の発表では「失踪原因が不明」でも、失踪者が短期間に多数出ていたり、継続的に出ていたりするケースで停止措置が講ぜられることになりました。
しかもその対象が実習先だけではなく、監理団体と海外現地送出機関に広がっています。失踪に対する措置が厳格化されたと言えるでしょう。 - 無期限受け入れ不可とする措置
仮に賃金の不払い等の違法行為が原因で技能実習生が失踪してしまった場合は、その機関が無期限受け入れ不可処分を下されるように変わります。こちらも実習先だけではなく、監理団体や海外現地送出機関が対象です。 - 技能実習生の在留カード番号のハローワーク報告義務
これまで「外国人雇用状況の届出」では求められなかった。技能実習生の在留カード番号をハローワークへ報告することが義務となります。失踪者の特定を容易にするためです。 - 違法行為をしていた企業名の公表
失踪者を出した企業が違法行為をしていた場合、企業名が公表されます。これにより、ただ技能実習生を雇用できなくなるだけではなく、社会的な制裁を受けるという仕組みに変わりました。こちらの施行により、悪質な企業を本当に淘汰できるかもしれません。