外国人労働者の労働時間について(前編)
決められた在留期間の中で働くことができる在留資格「就労ビザ」。
「就労ビザ」は、その名の通り”働くことができるビザ”ですが無制限に働いていいというわけではありません。日本人と同様に「労働基準法」に基づいた時間内で働くことが求められています。
労働基準法の内容は下記の通りです。
- 使用者は、原則として1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけません。
- 使用者は、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければいけません。
- 使用者は、少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。
つまり日本人労働者と同じく、”1日8時間×週5日以内の労働”ということです。
また、「残業」に関するルールは下記の通りです。
労働者の過半数で組織する労働組合か労働者の過半数を代表する者との労使協定において、時間外・休日労働について定め、行政官庁に届け出た場合には法定の労働時間を超える時間外労働、法定の休日における休日労働が認められます。この労使協定を「時間外労働協定」といいます。なお、時間外労働時間には限度が設けられています。
※時間外労働協定は、労働基準法第36条に定めがあることから、一般に「36(サブロク)協定」とも呼ばれています。
「36協定」は、1日8時間(週40時間)を超える場合のルールで受け入れ先機関と労働者が協定を結びます。ただし、この「36協定」であっても無限に残業が許されているわけではなく、1か月以上の上限は45時間、年間で360時間までとなっています。
このように、「就労ビザ」を持っている外国人は日本人労働者と同じ条件で働くことができるのです。
外国人労働者だからといって不当に残業させたりすることは絶対に許されません。
技能実習生の失踪及び起きてしまった際の対応
技能実習生の失踪率は全体の約2%です。受け入れ数が年々増えているのに伴い、失踪数も増えています。
2019年に8796人、2020年に5885人、2021年に7167人、2022年上半期に3798人となっています。技能実習生が失踪してしまう理由は大きく分けて2つあり、実習生側の経済的な問題と、企業側の待遇の問題があります。
実習生側の経済的な問題
技能実習生は自国の送り出し機関に、日本語講習や寮の費用を支払っています。中には100万円以上を支払い、日本に来る人もいます。技能実習生が最も多いベトナムでは、平均月収が約3万円と言われており、送り出し機関に払う費用は借金をしているケースも多いです。日本での技能実習生の給与が思っていたより低い場合、借金を返せない場合もあります。そのため、もっと稼ぐために悪徳ブローカーの誘いに乗って失踪する場合があります。
技能実習生が実習以外の職に就くのは違法ですが、それをわかっていても借金の返済や母国への仕送りのため、失踪して不法就労を行うケースが増えています。
企業側の待遇の問題
賃金の未払いや人権侵害、劣悪な労働環境が原因で技能実習生が失踪してしまうことがあります。技能実習法では不当な待遇を禁止していますが、それに違反する企業もあります。
もともと約束していた給料を払わないという悪質極まりないものから、月給制なのに天候などの理由で勤務がなかった時に減額する場合、勤務したのに勤務しなかったことにする場合、拘束時間なのに理由をつけて勤務外にする場合、残業代を払わない場合、残業代を減額する場合など様々です。
人権侵害も様々あり、国籍や宗教、肌の色や性別による差別や妊娠時の解雇。暴言などのパワーハラスメントなど、常識を持たない中小零細企業経営者やその従業員により不当な扱いを受けるケースがそれにあたります。
もしも技能実習生が失踪してしまった場合、受け入れ企業・監理団体は必要書類の提出や警察への相談など行うべき対応があります。
次回は技能実習生が失踪してしまった場合に必要な対応をご紹介します。